ワイル氏考案のドリア。名前の由来は?

ワイル氏考案のドリア。名前の由来は?

もともと「ドリア」はフランス料理に存在していました。イタリアの港町・ジェノバの名門貴族「ドーリア家」のためにパリのレストランが作った、キュウリ・トマト・チキンを使った料理のことを指していたのです。古典フランス料理で「ドーリア風」というとキュウリを添えるのはその名残だと考えられますが※1、ワイル氏が考案した「ドリア」とは全くの別物です。

 

料理そのものは違えど、名前自体は「ドーリア家」にちなんでいて、特に十五世紀ごろに活躍したジェノバの海軍提督・アンドレア・ドーリア(Doria)という人物のことを指しているのでしょう。中世時代のジェノバは貿易で栄えていて、十八世紀末頃まで「ジェノバ共和国」として独立していました。その中で、ドーリア家は、ジェノバ共和国が建国される以前から名家として知られる超名門貴族だったのです。その一族の中でもアンドレア・ドーリア提督は、「ドーリア家」といえばまずその名前が連想されるほど有名な人物です。(ちなみに、ジェノバには今でもドーリア家の宮殿が残っているそうです)また、ジェノバは十八世紀の末にはナポレオンによって占領された時期もあり、ほんの十年わずかだったとは言え、フランスとも関わりを持っていたことになります。

 

ワイル氏が考案した「ドリア」の名前の由来がアンドレア・ドーリア提督ということはあまり知られてはいません。しかし、かつてニューグランドでワイル氏の補佐をしていたコックの荒田勇作氏が1964年に出版した『荒田西洋料理』という料理書には、ドリアのことを「海将風」と記載されています。由来については分かりましたが、ワイル氏はなぜライスにグラタンを乗せた料理に"Doria"と名付けたのでしょう。